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万博ビザが「日本滞在の裏口」に!? 難民申請で国費生活、そのカラクリ

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世界の国旗 大阪万博

先日、取材のために都内の行政書士事務所を訪れたときのことだ。待合室の椅子にはアフリカ出身とみられる若者が数人、真剣な表情で書類をめくっていた。壁際には「在留資格切替相談」という貼り紙。担当者に話を聞くと「最近は万博ビザで来日した人からの問い合わせが急増しています」と声を潜めた。彼らの多くは「このまま日本で働きたいが、就労ビザの条件を満たせない」と打ち明け、次の一手として難民申請を検討しているという。

華やかな万博の裏側で、こうした静かな動きが進んでいることを知り、私は強い違和感を覚えた。なぜなら、難民制度は本来、人道的に守られるべき人々のための仕組みだからだ。それが「日本に長く滞在するための手段」として利用され始めている。現場で見た光景は、この制度が抱える「盲点」を如実に物語っていた。

大阪・関西万博の準備が佳境を迎える一方、その裏で静かに広がっている動きがある。
万博関連の「特定活動ビザ」で来日した外国人が、在留資格を切り替え、さらには難民申請を利用して日本に長期滞在し、国費による生活支援を受けるというルートだ。

こんな方におすすめ

  • 税金の使い道や制度の抜け穴に関心がある一般の方
  • 万博を契機に外国人の在留制度の動きが気になる方
  • 行政や法律分野で外国人支援や入管制度に関わる方

万博ビザから始まる“在留の分岐点”

万博の公式スタッフや関係者は「特定活動(告示13号)」という在留資格を与えられる【1】【2】。一見すると特別な資格で、華やかな国際イベントの舞台裏で働くことを可能にする“切符”のように見える。しかし実際には、この在留資格には厳格な制約がある。活動範囲は万博関連の業務に限定され、他の企業で働いたり、自由にアルバイトをしたりすることは許されない。

たとえば会場設営や通訳、運営サポートに携わる人はこのビザで来日するが、業務が終了すれば基本的に帰国する義務がある。「せっかく日本に来たのだから、もっと長く暮らしたい」と考える人も少なくないが、その願いを叶えるには在留資格の切り替えが必要となる。

切り替え先として多くの人が希望するのは「就労ビザ」だ。しかし日本の就労ビザは業務内容ごとに細かく区分されており、IT技術者や国際業務担当者、研究者など高度な専門性が求められる場合が多い。単純労働は原則として認められていないため、万博ビザからのスムーズな移行は困難だ。実際、行政書士事務所には「就労ビザに切り替えたい」という相談が相次いでいるが、学歴や職務内容が要件を満たさず「難しい」と説明されるケースが大半を占めている。

つまり、万博ビザは「華やかな舞台の裏で働くチャンス」を与える一方で、「将来にわたって日本に滞在できる保証」にはつながらない。そのギャップが、多くの外国人を別の選択肢へと向かわせているのだ。

ステップ内容読者へのポイント
① 万博ビザ取得万博スタッフや関係者は「特定活動(告示13号・14号)」で来日【1】【2】在留資格は万博業務に限定、原則ほかの仕事は不可
② 在留資格切替え希望「日本で働き続けたい」として就労ビザへの切替相談が急増行政書士・弁護士事務所に相談者が殺到
③ 就労ビザの壁学歴・専門性・報酬基準など高い要件が必要【2】単純労働や条件不足では切替が難しい
④ 難民申請という選択肢条件を満たせない人の一部が難民申請へ【3】審査中は滞在可能=実質的な“長期在留ルート”になる

難民申請が“抜け道”に

就労ビザへの切り替えが難しいと知った人々が次に目を向けるのが「難民申請」だ。本来、難民制度は迫害を受けて生命や自由が脅かされる人々を保護するための仕組みであり、人道的観点から設けられている【3】。しかし、現実には経済的な理由からこの制度に頼るケースが目立ち始めている。

難民申請を行うと、審査が終了するまでの間、日本に滞在することが可能になる。この「審査期間」が長いことが制度の大きな特徴だ。平均して2〜3年、場合によってはさらに長引くこともあり、その間は合法的に日本に居続けることができる。

さらに、難民申請者は国からの支援を受けられる。生活費として月約8万円が支給され、加えて住居費補助が認められるケースもある【4】。単身者であっても総額で月15万円程度の公費支援を受けられる計算になり、生活基盤を確保することが可能だ。加えて、法テラスを通じて弁護士費用も国費でカバーされる場合があり【5】【6】、手続きにかかる経済的負担は大幅に軽減される。

申請直後は就労が認められないが、約6か月が経過すれば「就労許可」の対象となる可能性が出てくる【3】。これにより、アルバイトや派遣などで収入を得ながら生活を続けられるようになる。この流れを利用すれば、難民認定が下りなくても数年間にわたり“合法的に”日本で生活できてしまうのだ。

つまり、難民申請は「本来の人道目的」と「経済的な滞在手段」という二面性を持つその二重性こそが、制度の「抜け道」と呼ばれる所以である。

制度の隙を突く現場の声

「ここ数か月で、万博ビザから難民申請に切り替えたいという相談が明らかに増えている」。都内で外国人案件を扱う行政書士はそう打ち明ける。就労ビザへの切替え条件を満たせない人々が、最後の選択肢として難民申請を選んでいるのだ。

難民支援の現場でもこの現象は把握されている。ある支援団体のスタッフは、「庇護を必要とする本物の難民もいるが、経済的理由で申請する人が増えていることで、制度の信頼性が揺らいでいる」と懸念を示す。実際、支援金や住居補助は国費で賄われており、納税者にとっては看過できない負担となっている。

一方で、申請者本人にとっては「祖国に帰れば仕事がない」「家族を養えない」という切実な現実がある。彼らの声を聞くと単純に「悪用」と断じることも難しい。制度の人道的使命と経済的利用との間で揺れ動く現場の実態がここにある。

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ルポ:万博スタッフから“難民申請者”へ ある若者の一日

万博スタッフから“難民申請者”へ 

午前9時、都内のアパートの一室。そこに暮らすのは、アフリカ出身の青年Aさん(20代後半)だ。彼は昨年、大阪・関西万博のスタッフとして来日した。来日時の在留資格は「特定活動(告示13号)」。本来ならば万博関連業務が終われば帰国する予定だった。

しかしAさんは日本での生活に魅力を感じ、「もっと長くここにいたい」と願うようになった。就労ビザに切り替えを希望したが、学歴や職務内容が要件を満たさず、行政書士からは「難しい」と言われた。

午後1時、彼は弁護士事務所を訪れる。机の上には「難民認定申請書」が置かれていた。弁護士は淡々と説明する。
「申請直後は働けませんが、半年が経てば就労許可が下りる可能性があります。支援金も受けられるので生活は成り立ちます」

午後3時、Aさんは東京入管に足を運び、難民申請を提出。窓口の職員は慣れた様子で書類を受け取り、「審査には時間がかかります」とだけ告げた。こうして彼は、正式に“難民申請者”となった。

夜7時、知人と食卓を囲みながら、Aさんはため息交じりに語る。
「母国に帰れば生活は苦しい。でも日本なら働けるチャンスがある。難民申請は、僕にとって唯一の道なんだ」

こうして、万博をきっかけに来日した一人の青年が、難民申請という別ルートに進む姿が浮かび上がる。

制度解説:数字でわかる「難民申請→国費支援」の流れ

1.手続きのフローチャート

2. 難民申請者が受けられる支援(国費)

  • 生活費:月額 約8万円(単身者の場合)
  • 住居費補助:家賃の実費支給(上限あり、原則8万円前後)
  • 医療費支援:医療扶助が別途用意されるケースあり
  • 弁護士費用:法テラスを通じて国費で立替え可能
  • 就労許可:申請から6か月後、一定条件でアルバイトや派遣労働が可能に

👉 合計すると、生活費+住居費で月15万円程度が公費負担されるケースもある。

3. 制度の実態

  • 難民認定率(2023年):わずか1.3%(認定者248人/申請数22,000人超)
  • 審査期間:平均で2〜3年(長期化するほど実質的な滞在延長になる)
  • 申請者国籍:近年はアフリカ・南アジア出身者が増加傾向

難民認定申請者数の推移

出典:出入国在留管理庁/「令和6年における難民認定者数等について」より

4. 法改正の限界

  • 2023年改正入管法で導入されたルール
    • 3回目以降の申請者 → 原則退去強制の猶予なし
  • ただし 初回・2回目の申請には猶予と支援制度が依然適用されるため、
    「1回目の申請で長期滞在+国費生活」が可能になる。

ポイント

  • 「申請した瞬間に滞在が合法化」される
  • 「半年後に働ける」可能性が出る
  • 「国費で生活を支えられる」仕組みが存在する

この“3点セット”が制度の隙を突いた“抜け道”として利用されている。

改正入管法の“穴”

こうした制度の利用が広がる中、2023年の入管法改正では濫用防止策が導入された【8】。特に注目されたのが「3回目以降の難民申請者には退去強制を原則猶予しない」というルールだ。これにより、繰り返し申請して滞在を延長する手口には一定の歯止めがかかった。

しかし、初回や2回目の申請については依然として在留が認められ、支援制度の対象にもなる。そのため、「まず1回目の申請で滞在を確保する」という戦略は依然として有効なのだ。実際、入管の統計によれば、2023年の難民認定率はわずか1.3%【7】。ほとんどの人が認定されない一方で、審査に数年かかるため長期滞在が実現してしまう。

改正は制度乱用の一部を抑えたに過ぎず、抜け道の根本的な解決には至っていない。制度の「人道性」と「実務上の脆弱性」の間にある矛盾が、今後も日本の移民政策を揺さぶる可能性は高い。

よくある質問

万博ビザ(特定活動13号・14号)を持っていれば、そのまま働けるの?

いいえ。特定活動13号は「万博業務」に限られ、14号はその家族用で就労は認められていません。他の職種で働くには在留資格変更の許可が必要で、要件(学歴・職務内容・報酬基準)を満たさないと認められません【1】【2】。

難民申請すればすぐに働けるの?

申請直後は就労できません。原則として申請から約6か月後に就労許可の対象になる可能性があり、それまでの間は国費による生活費や住居支援で暮らすケースが多いです【3】【4】。

難民申請をすれば必ず認められるの?

いいえ。2023年の難民認定率はわずか1.3%で、ほとんどが不認定です【7】。ただし審査に数年かかるため、その間は滞在が認められるという点が「抜け道」と言われる所以です。

入管法改正でこの“抜け道”はなくなるの?

2023年改正で3回目以降の申請者には退去強制猶予が原則なくなりました【8】。しかし初回・2回目は依然として滞在と支援が認められるため、完全に塞がれたわけではありません。

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大阪・関西万博をきっかけに来日した人々の一部が、在留資格の切り替えや難民申請を通じて日本に長期滞在している現実は、制度の柔軟性と脆弱性の両面を映し出している。
本来、万博ビザ(特定活動13号・14号)は「期間限定で日本に貢献するための資格」に過ぎない。しかし、就労ビザへの切替条件の厳しさが人々を別のルート すなわち難民申請へと誘導している。

難民申請制度は人道的配慮として不可欠な存在だ。だが、認定率がわずか1%台にとどまる現実【7】を踏まえると、多くの申請が経済的理由と見られているのも事実だ。国費による生活支援(月約8万円+住居費)や法テラスを通じた弁護士費用の補助【4】【5】【6】は、本来は迫害から逃れてきた人々を守るためのもの。そこに「滞在延長の手段」として利用する層が入り込むことで、制度全体の正当性が揺らぎかねない。

さらに2023年の入管法改正で3回目以降の申請制限が設けられたとはいえ【8】、初回・2回目は依然として制度の“隙間”が残っている。この点は今後も議論の火種となるだろう。

万博という国際イベントは、華やかな表舞台だけでなく、日本の移民・難民政策の根本的課題を照らし出した。
「人道」と「経済利用」の狭間で揺れる制度をどう立て直すか。
それは、万博後の日本が避けて通れない問いである。

項目内容読者への注意点
万博特定活動ビザ万博業務に限定された在留資格(告示13号・14号)【1】【2】他の就労活動は不可。更新・切替は厳格に審査される。
難民申請の流れ申請直後は就労不可 → 約6か月後に就労許可の可能性【3】「すぐ働ける」わけではない。審査長期化が実質滞在延長につながる。
国費による支援生活費(月約8万円)+住居費補助+弁護士費用の法テラス支援【4】【5】【6】本来は人道目的。経済目的の利用は制度の信頼を揺るがす。
難民認定率2023年はわずか1.3%【7】認定は極めて狭き門。ほとんどは不認定だが滞在は長期化する。
入管法改正2023年改正で3回目以降は退去強制猶予なし【8】ただし初回・2回目は依然として支援制度が使える。

参考文献一覧

  1. 法務省出入国在留管理庁「令和7年大阪・関西万博関係者及びその配偶者又は子に係る特定活動告示」
    https://www.moj.go.jp/isa/content/001389017.pdf
  2. 国際行政書士DSG「大阪・関西万博関係者向け“特定活動13号・14号”ビザを国際行政書士が解説」
    https://dsg.or.jp/column/working/13125/
  3. 出入国在留管理庁「難民認定制度について」
    https://www.moj.go.jp/isa/applications/refugee/
  4. 難民支援協会(JAR)「生活支援」
    https://www.refugee.or.jp/jar/support/
  5. PR TIMES「関弁連の弁護士有志と連携し、難民支援協会を法テラス指定相談場所として難民申請者へ無料法律相談を実施」
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000034.000011254.html
  6. 法テラス「外国人の方(For Foreign Nationals)」
    https://www.houterasu.or.jp/site/foreign-nationals/
  7. 出入国在留管理庁「令和5年における難民認定者数等について」
    https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/07_00041.html
    (官報資料PDF:https://www.moj.go.jp/isa/content/001414756.pdf)
  8. 出入国在留管理庁「令和5年改正入管法について」
    https://www.moj.go.jp/isa/01_00457.html

  • この記事を書いた人

deshi

フリーライターの deshiです。 かつて、とある作家の裏方として企画や調査を担当していました。そうした経験を活かし、ちょっと風変わりで角度のある視点から世の中を見つめています。 この「雑食系考察ブログ」では、日常の小さな違和感から時事ニュース、社会問題、ネット上の噂話まで幅広く取り上げ、「そんな見方もあったのか」と思える切り口を意識しています。 情報は事実ベースで収集・整理したうえで、私なりの視点で検証・考察しています。意見を押しつけることよりも、「一緒に考えてみませんか?」という姿勢を大切にしています。

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