ライフスタイル

チャット占いの裏側は9割がコピペ?元運営者が暴露する「マニュアル対応」の実態と依存の心理

本サイトの記事内に広告が含まれる場合があります

「顔も知らない、声も聞いたことがない。それなのに、スマホの画面に表示された文字を見るだけで、なぜ涙が溢れてくるのだろう?」

深夜、不安に押しつぶされそうになって、つい「復縁 占い」や「金運 鑑定」と検索してしまった経験はありませんか?そして、数千円、時には数万円を支払って送られてきたメッセージに救われたような気持ちになる。

実は、その感動の裏側には、あなたの心を意図的に動かすための「心理学的な仕掛け」と、驚くべき「工場の実態」が隠されています。

あなたがスマホを握りしめ、涙ながらに送信した「彼から連絡が来ません」という悩み相談。

そのメッセージを受け取った画面の向こう側にいたのは、水晶玉を持った老婆でも、修行を積んだ霊能者でもありませんでした。そこにいたのは、散らかった部屋でカップ麺をすすりながら、パソコンの画面と睨めっこをしているジャージ姿の男子大学生でした。

これは架空の話ではありません。私がフリーライターとして取材で目の当たりにした、ごくありふれたチャット占いの現場の光景です。

この記事では、現役ライターの視点から、占いが売れる心理学的構造と、その裏にある「情報の焼き直しゲーム」の実態を解説します。

これは決して占いを否定するものではありません。その仕組みを理解することで、賢い消費者になるための防衛策として、あるいは、人の心を動かすためのライティングの教科書として活用していただくための記録です。

こんな方におすすめ

  • ついつい占いに課金してしまい、後から「またやってしまった」と自己嫌悪に陥ることがある人
  • 商品やサービスが売れずに悩み、人の心を動かすための文章術や心理テクニックを学びたい人
  • 世の中で流行っているビジネスの「裏側の構造」を知的関心として深く知りたい人

結論:商品は「未来」ではなく「肯定」である

多くの人が誤解していますが、テキスト占いで売買されている商品の正体は、「未来の予言」ではありません。「今のあなたの肯定」です。

人は誰しも、自分の選択が間違っていないと信じたい生き物です。しかし、現実は厳しく、誰も「それでいいんだよ」とは言ってくれません。そこに、「あなたの進む道は輝いています」という(根拠のない)お墨付きを与える。これが現代の占いの正体です。

この事実を裏付けるために、私が取材した「トップランナー」の告白を紹介しましょう。

聖母のような「おばあちゃん占い師」の正体

ある日、私は「月商100万円を稼ぐ人気占い師」の取材に行きました。待ち合わせ場所に現れたのは、ごく普通の、少し疲れた様子の20代後半の男性でした。

彼はカフェでノートパソコンを開くと、私に「仕事場」を見せてくれました。画面には、プロフィール画像として「優しそうな着物姿の老婦人」の写真が表示されています。名前は「母」を連想させる柔らかいひらがなの名前。

「これが僕です」と彼は悪びれもせずに言いました。

彼が語ったのは、徹底したマーケティング戦略でした。

「復縁に悩む30代女性が一番求めているのは、正論を言うアドバイザーじゃないんです。『よしよし、辛かったね』と無条件で包み込んでくれる田舎のおばあちゃんのような存在なんです。だから、僕はその『器』を作りました」

彼は、相談者からのメッセージに対して、あえて少し古い言葉遣いや、独特の「間」を使って返信していました。

「若い男が『大丈夫だよ』と言っても響かない。でも、このおばあちゃんのアイコンを通して『大丈夫ですよ、明けない夜はありませんからね』と送ると、画面の向こうで相談者が泣いているのがわかるんです」

ここにあるのは、霊能力ではありません。「顧客が求めている理想の母親像」を演じ切る、高度なロールプレイの技術です。読者の皆さんが対峙しているのは、超常的な力ではなく、あなた以上にあなたの寂しさを理解し、計算しているマーケティングのプロなのです。

潜入:運命は「Excelのシート」で管理されていた

では、具体的な鑑定内容はどのように作られているのでしょうか。別の現場、ある占い運営会社のオフィス(といってもマンションの一室ですが)を取材した際に目撃したのは、驚くほどシステマチックな「工場」でした。

感情を因数分解する「対応マニュアル」

そこでは、5人ほどのオペレーターが黙々とキーボードを叩いていました。彼らの手元には、分厚いマニュアル、というより「巨大なExcelの対応表」がありました。

そこには、人間の悩みが冷徹なまでにパターン化されていました。

  • 「既読無視」パターンA:彼が忙しい場合 → テンプレート3を使用(励まし系)
  • 「既読無視」パターンB:彼に新しい女の影がある場合 → テンプレート5を使用(警戒系)
  • 「不倫」パターンC:罪悪感が強い場合 → 「前世の繋がり」を強調するテンプレートを使用

私が衝撃を受けたのは、そのテンプレートの精度の高さです。「テンプレート」と言っても、ロボットのような文章ではありません。「辛かったですね」「一人で抱え込んで偉いですね」といった、人間の情動を揺さぶる言葉が、計算された順序で配置されているのです。

オペレーターの仕事は、相談内容を読み、このExcel表から最適なパーツを選び、パズルのように組み合わせて送信すること。作業時間は一件あたり5分程度。

私たちが「私のために時間をかけて霊視してくれた」と感動している文章は、実は、数千人のデータを元に作られた「最も刺さる定型文の組み合わせ」に過ぎなかったのです。

なぜ「コピペ」なのに感動するのか

ここで疑問が湧きます。なぜ、そんなコピペ文章に私たちは涙してしまうのでしょうか?

その答えを、現場のリーダー格の女性が教えてくれました。

「それはね、みんな『自分の話』を聞いてほしいわけじゃないの。『自分が欲しい言葉』を誰かに言ってほしいだけなの。私たちは、その言葉をプロとして提供しているだけ。アイドルがファン全員に『愛してるよ』と言うのと一緒よ」

彼女の言葉は、残酷ですが真実を突いていました。

心理学解剖:悪用厳禁!人を動かす「3つのトリガー」

バーナム効果
コールドリーディング
確証バイアス

彼らがExcelシートを使って引き起こしている「感動」の正体は、実は行動経済学や心理学で説明がつきます。ここではプロが使う3つの技術を解剖します。

1. バーナム効果(誰にでも当てはまることの自分事化)

「あなたは表面的には明るく振る舞っていますが、実は人知れず孤独を感じることがありますね」

こう言われて、「私のことだ」と思わない人はほとんどいません。誰にでも当てはまる曖昧な記述を、自分だけに向けられたものだと錯覚する現象をバーナム効果と呼びます。プロはこれを導入部に使い、「この先生は視えている」という錯覚の土台を作ります。

2. コールドリーディング(信頼の獲得)

事前の会話や外見、検索キーワードなどから情報を推測し、あたかも霊能力で言い当てたかのように振る舞う技術です。

ネット占いの場合、「復縁」で検索してくる人は「連絡が来なくて不安」か「新しい恋人の有無が知りたい」のどちらかです。そこを先回りして「不安でしたね、でも大丈夫ですよ」と伝えることで、「この先生は私の苦しみをわかってくれている」という強烈なラポール(信頼関係)を形成します。

3. 確証バイアス(答え合わせの快感)

心理学に「確証バイアス」という言葉があります。これは、「自分が信じたい情報だけを集めて、都合の悪い情報は無視する」という脳のクセのことです。

例えば、あなたが「彼はまだ私を好きなはずだ」と信じたいとします。その状態で占い師から「彼もあなたを想っています」と言われると、あなたは「やっぱりそうだ!この先生は本物だ!」と強く感じます。逆に「彼はもう忘れています」と言われたら、「この占いは当たらない」と無視したくなるでしょう。

つまり、売れる占い師ほど、予言をするのではなく、顧客が心の中で望んでいる答えを察知し、それを「代弁」しているのです。占いは水晶玉ではなく、あなたの願望を映し出す「鏡」なのです。

構造分析:3層構造で回る「情報のわらしべ長者」たち

さらに視座を広げて、この業界のビジネス構造についても触れておきましょう。なぜネット上には似たような占いサービスや情報商材が溢れているのでしょうか?そこには「情報の転売」とも言える奇妙なエコシステムが存在します。

オリジナルなきコピーの循環

この業界は、大きく分けて3つの層で構成されています。

  • 第1層:オリジネーター(開拓者)泥臭い現場経験や、膨大な対面鑑定の中から、独自の法則やノウハウを見つけ出した人たちです。彼らの言葉には重みと真実があります。
  • 第2層:アレンジャー(翻訳者)第1層の人のノウハウや商材を買い、「自分なりにやってみたらこうだった」という体験談を付加して、少し安く売る人たちです。あるいは、売れている占いの定型文を少し書き換えて出品する人たちもここに含まれます。
  • 第3層:コンシューマー(消費者)第2層から情報を買い、感動する人たちです。

現在、ココナラやNoteなどのプラットフォームで増殖しているのは、第2層のアレンジャーたちです。彼らは一次情報(実体験)を持っていません。あるのは「売れている人の真似をする技術」だけです。

なぜコピー品でも売れてしまうのか

不思議なことに、中身が薄いコピー品でも売れてしまいます。それはなぜか。理由は「翻訳」に価値があるからです。

第1層の専門家の言葉は、時に難解で、厳しすぎることがあります。しかし、第2層のアレンジャーは、それを「誰にでもできる」「楽に幸せになれる」といった、大衆が好む甘い言葉(わかりやすい言葉)に噛み砕きます。

栄養満点の硬い玄米よりも、糖分たっぷりのふわふわのパンケーキの方が、多くの人にとっては魅力的に見えるのと同じです。しかし、そこには本質的な栄養(人生を変える力)が欠けていることが多いのです。

それでも「嘘」が人を救う瞬間がある

ここまで書くと、占いはすべて悪徳商法のように聞こえるかもしれません。しかし、取材を続ける中で、私は「嘘から出た誠」とも呼べる不思議な現象に何度も遭遇しました。

偽物の言葉が、本物の勇気に変わる時

ある常連客の女性の話です。彼女はDV気質の彼氏と別れられずに悩み、毎晩のように「偽のおばあちゃん占い師(前述の男性)」に相談していました。男性はマニュアル通りに「あなたはもっと大切にされるべき人です」「来月、運命が変わる星回りです」と励まし続けました。

数ヶ月後、彼女から長文のメッセージが届きました。「先生の言葉を信じて、彼と別れて引っ越しをしました。怖かったけど、先生が守ってくれていると思ったら動けました」

パソコンの前でカップ麺を食べていた男性は、そのメッセージを見て、しばらく黙り込んでいました。

「僕が言ったのは全部デタラメな星回りです。でも、そのデタラメが、彼女に暴力を振るう男から逃げる勇気を与えたんです。これって、詐欺なんですかね? それとも人助けなんですかね?」

彼の問いに、私は即答できませんでした。

霊的な根拠はゼロでも、その言葉が受け取り手の人生を良い方向に変えたなら、そこには確かに「機能的な価値」が存在していたからです。

詐欺的な誘導と健全なマーケティングの違い

最後に、この技術を悪用している例と、正しく使っている例を比較表にまとめました。ライティングやビジネスに応用したい方は参考にしてください。

項目悪質な占い・詐欺的ビジネス健全なマーケティング・ライティング
目的依存させて、何度も課金させること顧客の課題を解決し、自立させること
手法不安を煽り、「私しか救えない」と孤立させる共感を示し、「あなたならできる」と勇気づける
結果お金がなくなり、自分では何も決められなくなる自身の力で判断できるようになり、成長する

よくある質問

記事のテーマに関連する、読者の深い悩みに答えます。

完全に個別の霊視をしている人は本当にいないのですか?

ごく一部には存在すると信じたいですが、ネット上の「数千円で即レス」というサービス形態において、本物の霊視を一人ひとりに行うのは物理的に不可能です。ビジネスとして成立させる以上、9割はパターン化されていると考えるのが妥当です。

コピペ文章かどうかを見抜く方法はありますか?

具体性に欠ける表現(「人生の転機です」「大きな波が来ています」など)ばかりで、具体的な行動指針(「明日〇〇をしてください」「スマホを置いてください」など)がない場合は、定型文の可能性が高いです。

占い師のプロフィール写真は信じていいですか?

画像検索をかけてみてください。フリー素材のモデル写真や、AIで生成した架空の人物画像であるケースが非常に多いです。写真が美人すぎたり、過剰に神秘的だったりする場合は、演出である可能性が高いです。

バーナム効果はビジネスに使っても良いのですか?

顧客の潜在的なニーズを言語化するために使うのは正解です。「こういうことで悩んでいませんか?」と問いかけることで、顧客は「自分のための商品だ」と認識できるからです。しかし、事実無根の恐怖を煽るのはNGです。

占い依存から抜け出すにはどうすればいいですか?

「占い貯金」をしてみてください。占いに使おうとしたお金を、物理的な貯金箱に入れるのです。1ヶ月後、その金額で美味しいものを食べたり、美容院に行ったりしてください。「自分の機嫌は自分で取れる」という感覚を取り戻すことが、脱却への第一歩です。

私たちは「魔法」を買っているのではなく、「鏡」を買っている

占いの現場を深く取材してわかったことは、そこにあるのは「魔法」ではなく、徹底的に磨き上げられた「対人コミュニケーションの技術」だということです。

彼らは、私たちの心の隙間に入り込み、私たちが一番言ってほしい言葉を、一番心地よいタイミングで差し出してくれます。それは、冷え切った現代社会において、家族や友人さえも提供してくれない「無条件の承認」です。

もしあなたが今、占いにハマっているなら、無理にやめる必要はありません。ただ、画面の向こうにいるのは神様ではなく、「あなたを喜ばせようと必死に考えている人間」だということを思い出してください。

Excelの表から選ばれた言葉であっても、あなたがそれで元気になれるなら、それは「栄養ドリンク」のようなものです。飲んで元気を出して、自分の足で歩き出すために使えばいい。

一番危険なのは、そのドリンクがないと歩けなくなることです。

「占いは、人生の主役であるあなたが使う『道具』であり、決して『脚本家』にさせてはいけない」

これが、裏側を知り尽くした私からの、唯一のアドバイスです。

  • この記事を書いた人

deshi

フリーライターの deshiです。 かつて、とある作家の裏方として企画や調査を担当していました。そうした経験を活かし、ちょっと風変わりで角度のある視点から世の中を見つめています。 この「雑食系考察ブログ」では、日常の小さな違和感から時事ニュース、社会問題、ネット上の噂話まで幅広く取り上げ、「そんな見方もあったのか」と思える切り口を意識しています。 情報は事実ベースで収集・整理したうえで、私なりの視点で検証・考察しています。意見を押しつけることよりも、「一緒に考えてみませんか?」という姿勢を大切にしています。

-ライフスタイル